
こんにちは。合同会社トビガスマル代表の廣瀬です。
ふだん映像の撮影や編集を仕事にしている私たちですが、最初に動画を撮り始めたころ、よくわからなかったのが「シャッタースピード」でした。
「この設定、どうすればいいの?」「1/60秒って何のこと?」
そんな疑問だらけの状態からスタートして、いまでは仕事として毎日カメラを回すようになった私たちが、初心者向けにやさしくシャッタースピードの基本とコツを解説します。
この記事では、「なぜフレームレートの2倍がいいのか?」という原理から、実際にどう設定すればいいか、失敗しないコツ、そしてモーションブラーやNDフィルターなどの話まで、カメラ初心者さんにもわかりやすく丁寧にお届けします。
読み終えるころには、「あ、シャッタースピードってそういうことだったのか!」とスッキリしているはず。
ぜひ、コーヒー片手にリラックスしながら読んでみてくださいね。
目次
シャッタースピードとは?カメラの“露光時間”を決める設定
まずはシャッタースピードの基本を押さえましょう。シャッタースピードとは、カメラのシャッターが開いてイメージセンサー(またはフィルム)に光を当てている時間の長さのことです。簡単に言えば「1コマ(フレーム)を撮影するのに何秒露光するか」という設定で、通常「1/60秒」や「1/1000秒」など秒数の分母で表現されます。例えば1/60秒とは1秒間にシャッターが60回開閉する速さです。
シャッタースピードを変えると映像の明るさと動きの写り方が変わります。シャッターが開いている時間が長い(シャッタースピードが遅い)ほど多くの光を取り込めるので映像は明るくなりますが、その分、動いている被写体はブレやすくなります。一方、シャッターが開いている時間が短い(シャッタースピードが速い)ほど光の取り込み量は減り映像は暗くなりますが、動く被写体を止めてクッキリ写せます。
フィルム時代から受け継がれる原理
シャッタースピードの考え方はデジタルカメラの登場以前、フィルムカメラ時代から受け継がれています。昔の映画用フィルムカメラでは、回転式の円盤シャッター(ロータリーディスクシャッター)が使われており、シャッターの開口角度(シャッターアングル)によって各フレームの露光時間を決めていました。典型的なのはシャッターアングル180°で、これは1フレームあたりちょうどフレーム期間の半分だけ露光する設定です。例えば24fpsの映画カメラでシャッターアングル180°の場合、露光時間は1/48秒程度となり、これが人間の目にとって自然なブレ(モーションブラー)を伴う映像になるとされました。この原理はデジタルの現在でも「180度シャッターの法則」として語り継がれており、動画撮影時のシャッタースピード設定の基本的な目安になっています。
フレームレートとシャッタースピードの関係:「180度シャッターの法則」
では具体的に、動画ではどのようにシャッタースピードを設定すれば良いのでしょうか? キーワードは先述したフレームレートと180度シャッターの法則です。
フレームレートとは動画が1秒間に何枚の静止画で構成されているかを表す値です(単位:fps)。例えば24fpsなら1秒間に24コマ、30fpsなら30コマの画像が連なって動画になっています。動画では各コマを連続再生することで人の目には滑らかな動きに見えますが、このとき各コマに適度なブレ(モーションブラー:動いている被写体が残像のようにブレて写る現象)があることで、より自然なつながりに感じられます。
前述の180度シャッターの法則に従えば、シャッタースピードはフレームレートの約2倍の分母に設定すると良いとされています。つまりフレームレートの半分の時間だけ露光するイメージです。
具体的には次の通りです:
このように、設定したフレームレートの2倍程度のシャッタースピードにすることで、各コマに適度なブレが乗り、人間の目に近い自然な見え方になります。この設定はシャッターアングル180°(180度シャッター)とも呼ばれ、動画撮影の基本セオリーです。特に意図がない限り、初心者のうちはこの目安通りに設定しておけば大きな失敗はないでしょう。
注意点として、カメラによってはピッタリ「2倍」に合致する数値が用意されていない場合があります(例えばシャッタースピード1/48秒や1/120秒が選べないことがある)。その場合は近い値(1/50秒や1/125秒など)を選べば問題ありません。また、一部のシネマカメラや上位モデルではシャッターアングルで設定できる機種もあります。シャッターアングルを180°に指定すれば、フレームレートを変更しても自動的に適切なシャッタースピードに調整されるので便利ですが、まずは通常のシャッタースピード設定で基本を身につけましょう。
シャッタースピードで変わる映像の見え方:モーションブラーの効果
シャッタースピードの設定によって、動画の写り方(特に動きの表現)がどのように変化するかを見てみましょう。モーションブラーの量が映像の雰囲気に大きく影響するためです。
次の画像は動いている〓〓を撮影した比較例です。
上の〓〓はシャッタースピード1/50秒で撮影しており、〓〓がブレて写っています。一方、下の写真はシャッタースピード1/1600秒という高速シャッターで撮影しており、〓〓の細部までくっきり捉えています。静止画だけ見ると下のほうが鮮明に見えますが、動画として再生すると、1コマ1コマが止まって見える下の映像は動きがカクカク(パラパラ漫画のよう)して感じられ、不自然に映ります。逆に上の1/50秒の映像は各コマに適度なブレがあるおかげで、連続して見ると滑らかに感じられますす。このように、シャッタースピードが速すぎるとモーションブラーが不足して映像がぎこちなくなり、シャッタースピードが遅すぎるとブレが強くなりすぎて全体がぼやけた印象になります。
映像制作では、通常は適切なモーションブラーを得るために前述の「フレームレートの2倍」のシャッタースピードを使います。ただし、あえて演出意図でモーションブラーの量を変えることもあります。例えば激しいアクションシーンで臨場感や緊張感を出すためにシャッタースピードを速く設定し、1コマ1コマをシャープに見せる手法もあります。一方、夢の中のシーンなどで敢えてブレを強く出すためにシャッタースピードを極端に遅く設定する演出もあります。そのような特殊な場合を除いて、初心者のうちは基本通りのシャッタースピードで撮影することをおすすめします。「なんだか映像がカクついて見える…」というときは、シャッタースピードが必要以上に速くなっていないかチェックしてみましょう。
シーン別:シャッタースピードを調整したい場合
通常は上記セオリー通りの設定で問題ありませんが、状況によってはシャッタースピードを変えることで効果的な場合があります。初心者の方でも覚えておきたいケースを3つ紹介します。
意図的にブレを演出したいとき
映像表現として被写体をあえてブレさせたい場合は、シャッタースピードを通常より遅く設定します。例えば疾走感を強調したい場面で背景を流すようにしたり、夜の街で車のライトを線状に残すような表現です。
動画から鮮明な静止画を切り出したいとき
撮影した動画の一部を後から写真のように使いたい場合や、決定的瞬間を静止画として保存したい場合は、シャッタースピードを速めに設定しておくと安心です。高速シャッターなら動きが止まったシャープなコマが得られるため、例えばスポーツや乗り物など速い動きを捉える際に有効です。
照明のフリッカー(ちらつき)を防ぎたいとき
室内の蛍光灯などは高速で明滅しており(フリッカー現象)、シャッタースピードによっては映像にちらつきが出てしまいます。対策として、東日本では1/50秒や1/100秒(50Hzの倍数)、西日本では1/60秒や1/120秒(60Hzの倍数)に設定するとフリッカーを抑えられます。蛍光灯下で撮影して「画面がチカチカする…」という経験がある方は、この点を疑ってみましょう。
上記のようなケースでは、状況に応じてシャッタースピードを普段より速くまたは遅く調整することで、より狙い通りの映像に近づけることができます。ただし、シャッタースピードを変更すると明るさも変わってしまう点に注意が必要です。特に明るさについては、次の項目で紹介するNDフィルターなどで調整するのが一般的です。
明るい環境での必須アイテム:NDフィルターで露出をコントロール
屋外の明るいシーンで撮影する際、「フレームレートの2倍」の適正なシャッタースピードに設定すると映像が明るくなりすぎて真っ白に飛んでしまうことがあります。例えば日中の屋外でフレームレート30fpsに対しシャッタースピードを1/60秒に設定すると、絞り(F値)を大きく絞り込んだりISO感度を最低に下げても、それでも明るすぎて白飛びしてしまうケースが少なくありません。だからといってシャッタースピードを極端に速くして明るさを抑えてしまうと、先述のように映像が不自然になってしまいます。
そこで登場するのがNDフィルターです。NDフィルターとは「Neutral Density filter(ニュートラル・デンシティ・フィルター)」の略称で、レンズの前に装着して光の量を減らすためのフィルターです。言わばカメラ用のサングラスで、光量だけを均等に減らし色味には影響を与えません。NDフィルターを使えば、明るい場所でもシャッタースピードを1/60秒程度に保ったまま適正露出で撮影でき、モーションブラーを維持しつつ白飛びを防げます。
NDフィルターには減光量の異なる種類があり、シーンの明るさに応じて調整できる可変NDフィルター(バリアブルND)が特に便利です。ダイヤル操作で減光量を滑らかに変えられるので、明るさの変化にも素早く対応できます。
明るい場所で適正なシャッタースピードを維持するために、NDフィルターは動画撮影においてほぼ必須とも言えるアイテムです。手持ちのカメラに内蔵NDフィルター機能が無い場合は、レンズ径に合ったNDフィルターを準備しておきましょう。日差しの強い屋外でもシャッタースピードを自由にコントロールできるので、映像のクオリティが安定します。
まとめ:シャッタースピードを味方に、思い通りの映像を撮ろう
まずは“基本の1/60秒”から、気楽に始めてみよう!
動画撮影のシャッタースピードは、数字の話に聞こえるかもしれませんが、実は“映像の気持ちよさ”や“伝わり方”に深く関わる、とっても大切な要素です。
「難しそう…」と思っていた方も、
フレームレートの2倍=モーションブラーがちょうどいい、という感覚がつかめてきたのではないでしょうか?
でも、最初から完璧を目指す必要はありません。
大切なのは、「実際に撮ってみること」。失敗しても、うまくいかなくても、それが経験になります。
私たちも最初は設定をミスって「全部カクカク映像になってる!」なんてことが何度もありました(笑)。でもそのたびに、「次はこうしてみよう」と改善していくことで、少しずつ上達できたと思っています。
あなたのカメラライフが、今日よりもっと楽しくなりますように。
そしてもし、わからないことがあれば、お気軽にトビガスマルまでご相談くださいね。
私たちは、機材のことも撮影のことも、何でも話せる“動画仲間”です!

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