
音楽制作や動画編集をしていて、「もっと音をクリアにしたい」「なんとなく音がごちゃっとして聴きづらい」——そんな悩みを抱えたことはありませんか?
実は、その原因の多くは音の“周波数バランス”の乱れ。
そしてその解決に欠かせないのが、イコライザー(EQ)というツールです。
EQは、音の中の特定の周波数帯域を強調したりカットしたりすることで、
ミックス全体をスッキリ聴きやすく整えたり、楽器同士がぶつからないように分離したりできる、音作りの核となる存在。
このガイドでは、「そもそもEQって何?」という初心者の方から、
「楽器別にどう設定すればいいの?」という実践派まで、
ステップバイステップで理解しながら、“自分の耳で使いこなす”スキルを身につけられるように構成しています。
DAWを開くたびに迷っていたEQが、「自分の武器」になりますように。
さあ、一緒にEQの世界を攻略していきましょう。
イコライザー(EQ)とは?基本と役割を理解しよう
まずはEQの基本を押さえましょう。イコライザー(Equalizer)とは、音声信号の特定の周波数帯域を調整するツールです。 高音・中音・低音のバランスを整えたり、特定の音を強調・削ったりすることで、聴きやすく、クリアな音質に仕上げることができます。
イコライザーの基本原理
音は周波数(Hz)ごとに成り立っています。 例えば:
- 低音:20〜250Hz(キック、ベースなど)
- 中音:250〜4,000Hz(ボーカル、ギターなど)
- 高音:4,000〜20,000Hz(ハイハット、シンバルなど)
EQはこれらの帯域を「削る(カット)」または「持ち上げる(ブースト)」ことで、 音の輪郭やバランスを調整できます。 たとえば、ボーカルの埋もれた声を前に出したり、モコモコしたベース音を引き締めたりすることが可能です。
イコライザーの主な役割
EQの役割は多岐に渡りますが、大きく分けると以下の3つです:
- 不要な帯域の除去: マイクの低音ノイズ、風切り音など
- 楽器同士の分離: ぶつかり合う周波数を調整して聴きやすく
- キャラクターの強調: ボーカルの“抜け”やギターの“キレ”を引き出す
こうした調整により、ミックスの中で各音がしっかり立ち、かつ溶け込む理想的なサウンドを実現します。
グラフィックEQとパラメトリックEQの違い
EQにはさまざまな種類がありますが、主に以下の2タイプが使われます:
- グラフィックEQ: 周波数帯ごとに固定されたスライダーを上下するタイプ(視覚的に操作しやすい)
- パラメトリックEQ: 自由に周波数・Q幅・ゲインを設定できるタイプ(細かな調整が可能)
プロの現場では、より柔軟なパラメトリックEQが主流です。 DAW(音楽制作ソフト)に標準搭載されているものの多くもこのタイプです。
イコライザーのパラメータを徹底解説
イコライザー(特にパラメトリックEQ)を使いこなすためには、3つの基本パラメータを理解しておくことが重要です。
これらを自在に操れるようになることで、自分の意図通りに音を調整できるようになります。
ゲイン(Gain)
ゲインは、指定した周波数帯域の音量を上下させる操作です。
- プラス(+)方向: その帯域を強調(ブースト)
- マイナス(−)方向: その帯域を削る(カット)
例えば、ボーカルの声がこもって聴こえるなら、中低域(200〜500Hz)を少しカットするだけで、グッと抜けの良い声になります。
周波数(Frequency)
これは「どの音域を操作するか」を指定するパラメータです。
周波数の目安は以下の通り:
- 20〜80Hz: 超低音(サブベース、重低音)
- 100〜250Hz: 低音域(キック、ベースの太さ)
- 300〜800Hz: 中低域(モコモコ感、こもり)
- 1〜4kHz: 中高域(ボーカル、抜けの良さ)
- 5〜10kHz: 高域(明るさ、透明感)
- 10〜20kHz: 超高域(空気感、ハイハットのきらめき)
「どこを触ればどんな変化が起きるか」を耳と一緒に覚えていきましょう。
Q幅(Q:キュー、またはBandwidth)
Qは、調整する周波数帯域の“幅の広さ”を意味します。
- Q幅が広い: ゆるやかに広範囲をブースト/カット → 自然な変化
- Q幅が狭い: ピンポイントで狭い範囲を操作 → 精密な補正(または音作り)
例えば、耳に痛い「キーン」という音だけをピンポイントで削りたい場合は、Qを狭めて特定周波数をカットします。
この3つの要素(ゲイン・周波数・Q)を組み合わせることで、「音を整える」「音の個性を引き出す」「他の音と住み分ける」といった操作が可能になります。
楽器別イコライザー設定のヒント
EQの使い方は“音楽ジャンル”や“録音状況”によって変わりますが、ここでは代表的な楽器別に、よく使われるEQ設定の考え方を紹介します。
あくまで「参考のスタートライン」として、自分の耳と組み合わせて使っていきましょう。
ボーカル
目的: 声を埋もれさせず、自然に前に出す
- 150〜300Hz: こもり感が強ければカット(−3dB〜)
- 1kHz〜4kHz: 声の輪郭、明瞭さをブースト(+2〜4dB)
- 10kHz〜: 空気感、抜けを演出(ハイシェルフで+少し)
ノイズ対策で、80Hz以下をローカット(ハイパス)しておくと良いことが多いです。
ギター(エレキ/アコースティック)
目的: ほかの楽器とかぶらないよう整理する
- 80〜150Hz: ローカット(ベースとかぶらないように)
- 300〜800Hz: モコモコ感や鼻づまり感があればカット
- 2kHz〜4kHz: ピッキングやアタック感の強調に
アコギでは空気感を出したい場合に、10kHzあたりを軽く持ち上げるのも効果的です。
ベース
目的: 太くてしっかりした低音を出しつつ、他楽器と分離させる
- 30〜60Hz: サブ感、重低音。スピーカー環境次第で調整
- 80〜120Hz: ベースの芯。太さを出す
- 500Hz〜800Hz: 抜けが悪ければ少しブースト
- 2kHz〜: 指弾きやスラップのアタック感を調整
ミックスに埋もれて聞こえにくいときは、中域を少し持ち上げることで存在感が出ます。
楽器それぞれに「役割」と「得意な周波数帯域」があります。 EQでの調整は、あくまで全体のバランスの中での最適化。 他の楽器との重なりを避けつつ、その楽器らしさを活かすように心がけましょう。
実践!イコライザーを使った音作り
ここからは、実際にイコライザーを使って「どう音を整え、どうキャラクターを出すか」という実践的なポイントを紹介していきます。
EQは“何かを足す”よりも、“余計なものを引く”ほうが自然で上手くいくことが多いのもポイントです。
不要な帯域をカットする(カットEQ)
まず最初に意識したいのは、「鳴ってはいるけど必要ない音域」を削ることです。
例:
- ボーカルやギター:80Hz以下の低音をハイパス(風切り音や無駄な低音対策)
- ベース:200〜300Hzに“モコモコ感”があれば少しカット
- ハイハットやシンバル:2〜4kHzあたりの“耳に刺さる”帯域を削る
不要な帯域を削るだけで、ミックス全体がすっきりして、各楽器の輪郭が見えてきます。
必要な帯域をブーストする(ブーストEQ)
音をより魅力的にしたいときは、狙った周波数を軽く持ち上げることも有効です。
ただし、「必要最小限・ピンポイント」を心がけましょう。ブーストしすぎると音が不自然になります。
例:
- ボーカルの明瞭感 → 2〜4kHzを+2〜3dB程度
- ギターの“キレ” → 1.5〜3kHzのアタック強調
- ベースの存在感 → 700Hz〜1kHzの中域を軽く持ち上げる
逆に「出過ぎている音域がある」場合は、そちらをカットして相対的に引き立てるのも手です。
アナライザーを活用する
耳に自信がないうちは、スペクトラムアナライザー(視覚的なEQメーター)を活用すると効果的です。
アナライザーを見ながら:
- どこにピークがあるか
- どの帯域に楽器が集中しているか
- 空いている帯域を埋めるべきか
といった“周波数バランスの可視化”ができます。
耳と目の両方を使って調整することで、徐々に感覚も育ちます。
EQは、あくまで音の最終ゴールに向けた「調整ツール」です。 「明確な意図を持って操作する」ことで、音作りの精度が一気に上がります。
h2 class=”styled_h2″>まとめ:イコライザーを使いこなして、理想のサウンドへ
イコライザー(EQ)は、音の「余分」を削り、「必要」を引き立てる、音作りの土台を支えるツールです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、耳と目で“音の輪郭”を理解していくことで、 どんどん「意図した音に近づける力」が身についていきます。
今回のポイントをおさらい
- EQは周波数ごとの音量を調整する道具
- 基本パラメータは3つ: ゲイン(量)、周波数(位置)、Q幅(範囲)
- まずは不要な帯域をカットするのが基本
- ブーストは控えめに、意図的に
- 楽器別に特性を理解して調整
- アナライザーで可視化しながら耳を育てる
ミックスでも映像でも、「伝わる音」には理由があります。 EQは単なる機能ではなく、あなたのセンスとメッセージを届けるための表現手段です。
ぜひこの記事を参考に、あなた自身の音の理想を追い求めてみてください。

トビガスマルでは、映像制作やイベント収録の現場でもEQ調整は欠かせない工程。
「音の設計」は映像の印象を左右する重要なファクターだと実感しています。
これから音にこだわっていきたい方の参考になればうれしいです!
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