
合同会社トビガスマルは、式典やイベントのオープニング動画をたくさん制作させていただいていますが、必ずと言っていいほど次のようなご相談をいただきます。

上映時に再生バーやデスクトップ画面など、動画以外のものをお客様に見せたくない。何か良い方法はないか?
お心当たりのある方も多いのではないでしょうか。実際、式典やイベントなどで動画を決まったタイミングで流す「ポン出し」は、一瞬たりとも余計な映像(再生バーやデスクトップ画面など)をスクリーンに映さないようにする必要があり、非常に難しい作業です。
とはいえ、ここで手を抜くわけにはいきません。再生バーがちらりとでも映ってしまえば、それだけで式典やイベントの雰囲気が損なわれてしまいます。まさに失敗の許されない重要な演出と言えるでしょう。
こうした理由から、弊社では「再生バーが表示されてしまうリスクの高い一般的な映像再生ソフト(Windows Media PlayerやVLC、QuickTimeなど)は極力避けるべき」とお客様にお伝えしています。では、具体的にどのように対策すればよいのでしょうか?この記事では、ポン出しを成功させるためのポイントとおすすめの機材をご紹介し、あなたの悩みを解決します。
目次
動画の「ポン出し」って何?
繰り返しになりますが、式典や結婚式といったライブイベントで、事前に用意した映像(たとえばオープニングムービーやCM、PVなど)を狙ったタイミングで即座に再生することを「ポン出し」といいます。文字通り「ポン」と映像を出すイメージです。
元々は舞台演出に合わせてSE(効果音)やBGMなどの音源を瞬時に再生することを指す言葉でしたが、現在では映像の現場でも使われるようになっています。つまり、音響だけでなく映像においても「決められた瞬間にコンテンツを流す技術」を指す言葉として定着しているのです。
動画の「ポン出し」が難しい3つの理由
では、なぜ映像のポン出しはそれほど難しいのでしょうか?主な理由として、次の3点が挙げられます。
① 再生バーなど余計なものを一切映せない
ポン出しを行う際に最も重要であり、かつ非常に難しいのが、「再生バーやプレーヤーの操作画面など、映像以外のものをスクリーンに映してしまわないこと」です。私も実際に式典にスタッフとして参加する機会がありますが、高い確率でプロジェクターに再生ソフトのバーが表示されている場面を目にします。中には、オペレーターのPCデスクトップ(壁紙やアイコン)が堂々と映し出されてしまっているケースも……。
せっかくのイベントや式典の雰囲気がそれだけで壊れてしまうため、余計なUIを一瞬たりとも見せないようにすることは絶対条件です。しかし通常のPC用再生ソフトでは、再生開始時やループ時などにどうしてもコントロールバーが表示されたり、カーソルが映り込んだりするリスクが伴います。こうした事態を防ぐには高度なテクニックと注意力が必要であり、まさにポン出し最大の難関と言えます。
② タイミングのずれ・停止などミスが許されない
ライブイベント本番で映像の再生タイミングがずれたり、途中で映像が止まってしまったりすることは決して許されません。映像が出るのが数秒遅れただけでも、イベント全体の進行や演出が台無しになってしまいます。司会者や音響、照明とのタイミングも連動している場合が多く、映像担当のオペレーターには相当なプレッシャーがかかります。
一度きりの本番でミスを起こさないためには、機材やソフトにも万全を期す必要があります。人為的な操作ミスはもちろん、ソフトの不具合やPCのフリーズなど、起こりうるトラブルを極力排除しなければなりません。そのためには、ミスを起こさない仕組み作りと信頼できる専用機材の導入が求められます。
③ 専用機材やプロ向けソフトは高価でハードルが高い
映像のポン出しを安全確実に行う方法としては、本来テレビ局や大規模イベントで使われるような専用機材やプロ仕様のソフトウェアを使うのが理想です。しかし、そういった機材・ソフトは非常に高額です。簡易なものでも初期投資で数十万円以上、場合によっては数百万円規模の費用がかかることもあります。例えば、舞台演出向けの特殊な再生システムや放送局向けのサーバー等を導入するのは、一般的な企業イベントの予算では現実的ではありません。
このように、「余計なものを映せない」「ミスが許されない」「プロ向け機材は高価で手が出ない」という3つの課題があるため、映像のポン出しは難易度が高いのです。
動画のポン出しにオススメの機材「HyperDeck Studio」
前置きが長くなりましたが、ここからはトビガスマルが愛用しているおすすめ機材をご紹介します。それが、Blackmagic Design社製の業務用ビデオデッキ「HyperDeck Studio」(ハイパーデッキスタジオ)シリーズです。HyperDeck Studioには用途や予算に応じてエントリーモデルからハイエンドモデルまで複数のラインナップがありますが、映像ポン出し用途には「HyperDeck Studio HD Plus」というモデルが特にオススメです (エントリーモデルでも十分機能しますが、このPlusモデルにはフロントパネルにヘッドホン端子が備わっており、音声の事前モニタリングができる利点があります)。
HyperDeck Studioを導入することで、先述のポン出しの課題がどのように解決できるのでしょうか。主なポイントを挙げてみます。
- クリーン出力:再生時に操作バーやマウスポインタなどが一切表示されず、映像信号のみをスクリーンに出力可能。
- 即時再生機能:本体のボタン操作ですぐに映像や音声の再生を開始でき、タイムラグのない「ポン出し」を実現。
- 高解像度対応:最大4K映像の記録・再生に対応し、美麗な映像演出も可能。
- 多様な入出力:SDI・HDMIなどプロ仕様の端子を搭載。プロジェクターやスイッチャー(映像切替機)とも柔軟に接続できます。
- 堅牢で安定動作:専用ハードウェアによる安定した動作で、PCのような予期せぬフリーズや通知ポップアップの心配がありません。
例えば、Blackmagic社のライブスイッチャー「ATEM」シリーズと連携させれば、スイッチャー側で映像を切り替えた際にHyperDeckのクリップを自動再生させることも可能です。この機能を使えば、スイッチャーの操作に合わせてタイミング良く映像を出すことができ、オペレーションが格段に楽になります。※ATEM Miniシリーズの新機能については、下記リンク先の記事でも詳しく解説しています。

2024.07.01
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さらに、HyperDeck Studio本体には再生専用の物理ボタン類やジョグダイヤル(サーチダイヤル)があり、直感的かつ正確な操作が可能です。内蔵の小型ディスプレイにはタイムコードやクリップのサムネイルが表示されるため、どの映像を再生しているか一目で確認できます。こうした専用機ならではの操作性と信頼性により、本番中にうっかりマウス操作を誤ったり、ソフトの挙動に悩まされたりするリスクを大幅に減らすことができるのです。
なお、HyperDeck Studioシリーズには複数モデルがありますが、冒頭で触れたとおり「HD Plus」モデルがポン出し用途に適しています。エントリーモデルの機能を一通り備えつつ、フロントにヘッドホン端子やスピーカーを搭載しているため、再生前に音声を確認したい場合にも便利です。また、上位モデルではSDI出力が2系統あり、キー信号とフィル信号の同時出力(透過映像の合成用途)にも対応していますが、通常のイベント映像再生用途であればエントリーモデルまたはHD Plusモデルで十分でしょう。
このように、HyperDeck Studioを使えば「余計なものを映さない」「タイミング通り確実に再生」「安定動作」といったポン出しの重要要件を満たすことができます。まさに映像ポン出しの強い味方と言えるでしょう。
※参考:HyperDeck Studio HD Plusの詳細仕様についてはメーカー公式ページ(Blackmagic Design公式サイト)もご参照ください。
動画のポン出しにオススメの機材「HyperDeck Studio」のデメリット
便利なHyperDeck Studioシリーズですが、「デメリット」というほどではないものの、利用にあたって留意すべき点もあります。
◆ 映像データを対応フォーマットに変換する手間
HyperDeck Studioで再生するためには、映像ファイルを事前に所定のフォーマットに変換しておく必要があります。具体的には、Blackmagic Design社の無償ソフトウェア「DaVinci Resolve(ダビンチ・リゾルブ)」を使って、Apple ProResあるいはAvid DNxHDといったコーデックにエンコードし直す作業です。このひと手間が若干面倒ではありますが、幸いDaVinci Resolveは無料版でも対応可能であり、変換自体も難しくありません。
なお、HyperDeck本体で再生可能なコーデックは限られているため、記録メディア上に異なるコーデックのファイルが混在している場合、設定したコーデックに合致するクリップしか本体に表示されないという点にも注意が必要です。例えばあるクリップだけProResで他はDNxHD、といった状況だと、一方が一覧に出てこない可能性があります。基本的には使用する全クリップを同じ形式に統一し、事前に確実に再生できる状態にしておくことが望ましいでしょう。
以上のように、事前の動画変換準備が必要となりますが、裏を返せば「対応フォーマットの映像さえ用意しておけば確実に動く」ということでもあります。万一変換作業が難しい場合でも、制作会社や専門業者に依頼すれば対応してもらえるケースがほとんどです(弊社でもProRes/DNxHDへの変換作業を承っています)。
【まとめ】ポン出しに悩んだら気軽にご相談ください! 「HyperDeck Studio」もレンタル致します
ここまで、映像ポン出しの重要性と難しさ、そして比較的導入しやすいおすすめ機材について紹介してきました。映像のポン出しのクオリティーは、イベントや式典全体のクオリティーに直結すると言っても過言ではありません。裏を返せば、ここを工夫し改善することでイベントの完成度を大きく高めることができます。
とはいえ、「比較的導入しやすい」とご紹介したHyperDeck Studio HD Plusであっても、実際に購入するとなるとそれなりの投資になります。特に年に数回程度しか映像演出を行わない企業様や団体様にとって、数十万円クラスの機材を購入・維持するのはハードルが高いでしょう。
そんな時は、ぜひ弊社にご相談ください。トビガスマルでは、HyperDeck Studio HD Plusをはじめとする各種映像機材のレンタルサービスも行っております。本番直前の映像変換作業も含め、映像ポン出しを安心してお任せいただけるようサポートいたします。一緒に、観客の心を動かす最高の映像演出を実現しましょう!
【おまけ】音のポン出しにオススメの機材「SP-404MKII」
映像のポン出しに比べれば、音響(サウンド)のポン出しには利用可能な選択肢がたくさんあります。PC上の再生ソフトやDJ用のパッドコントローラーなど色々考えられますが、私のお気に入りは定番のローランド社製サンプラー「SP-404MKII(エスピー404マーク2)」です。
実はRolandの担当者曰く、「SP-404をポン出し用途に使うのは日本人だけ」なのだとか(笑)。元々この機材はDJやトラックメイキング向けのリズムマシン・エフェクターですが、日本のイベント業界では効果音やBGMの即時再生ツールとして重宝されています。
例えば式典の現場では、前日のリハーサルになって「◯◯の効果音を流したいので音源の準備をお願いします!」と急に頼まれることが少なくありません。そんな時でもSP-404MKIIがあれば、パソコン要らずでSDカードや本体メモリーに音源を取り込み、本体のパッドを押すだけで効果音の再生が可能です。私も実際に、依頼された効果音をSP-404MKIIに仕込んで、その本体ごと会場の音響担当さんに預けるという方法で乗り切ることがよくあります。
このように音のポン出しについては比較的融通が利きますが、「手軽さ」と「確実さ」の両面でSP-404MKIIは優れた選択肢です。電源を入れてボタンを押すだけのシンプル操作でミスが起きにくく、PCと違って突然のソフト不具合に悩まされるリスクも極めて低いです。もし「音だけ流したいのにために高価な再生装置を用意するのもなぁ…」とお悩みなら、一度SP-404MKIIのようなコンパクトサンプラーを試してみる価値はあるでしょう。
ちなみに、トビガスマルではこのSP-404MKIIのレンタルも行っておりますので、必要な際はお気軽にご相談ください。
動画のポン出し機材などのレンタル費
最後に、先ほどご紹介した機材のレンタル料金目安についてご案内します。購入せずレンタルで手配すれば、コストを大幅に抑えつつプロ仕様の機材を利用できます。
- HyperDeck Studio HD Plus:1日あたり8,800円(税込)でレンタル可能です。
※長期レンタルや複数日利用の場合は別途割引プランもございます。 - Roland SP-404MKII:レンタル対応可能です(料金は期間やプランによりますのでお問い合わせください)。
上記は主要機材の一例ですが、この他にもプロジェクターやワイヤレスインカムなど、式典・イベント運営を支える様々な映像・音響機材のレンタルサービスを提供しています。弊社のレンタルサービスでは、高品質なプロ仕様機材をリーズナブルな価格で提供し、必要に応じて専門スタッフによる設置サポートや操作指導も行っております。また、前述のとおり映像データのフォーマット変換作業も含めてサポート可能ですので、「機材は借りたけれど使いこなせるか不安…」という場合も安心です。
機材レンタルの詳細やお見積もりについては、どうぞお気軽にお問い合わせください。適切な機材選定から当日の運用まで、トビガスマルが全力でお手伝いいたします。

2024.10.30
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