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イコライザー設定で人の声を最適化: Voiceをクリアにする方法

代表社員 廣瀬高之

こんにちは、映像と音のプロダクション・合同会社トビガスマルの廣瀬です。
ナレーション、インタビュー、対談動画。
どれも「声が命」なのに、収録後に聞き返してみると——
「なんか声がこもってる」「サ行が刺さる」「マイクの性能かな…」
そんな声、私たちの編集現場でもよく聞きます。

でもご安心を。
こうした“伝わりづらい声”の多くは、イコライザー設定でしっかり整えられます。

本記事では、私たちトビガスマルが日々の制作現場で行っているEQ設定の基本とコツを、初心者にもわかりやすくまとめました。
「人の声」をテーマに、音の輪郭を磨き、“聴きやすく、伝わる音”へと整える方法をお届けします。

声の印象は、動画の印象。
音が整えば、世界の見え方が変わります。
それでは、一緒にEQの旅を始めましょう。

イコライザー設定の基本

まずは、「声をクリアにする」ための土台づくり。ここではEQ(イコライザー)の役割と、人の声を整えるうえで押さえるべき基本帯域を理解しておきましょう。

イコライザーとは何か?

イコライザー(EQ)は、音声の周波数成分をコントロールするツールです。

ざっくり言えば、音の“低音・中音・高音”それぞれをブースト(強調)したりカット(削除)したりすることで、音質を整えるものです。

人の耳は特定の帯域に敏感だったり、不快感を覚える帯域があったりします。 だからこそ、EQを使って“ちょうどよく聞こえるバランス”に調整してあげる必要があるのです。

人の声に重要な周波数帯域

人の声において、よく調整される帯域は次の通りです。

周波数帯 役割・影響
80〜120Hz 重低音。男性ボイスの低音感(不要ならローカット)
200〜500Hz こもり感。削ると明瞭になる
800Hz〜1.5kHz 声の芯。存在感のある声に
2〜4kHz 明瞭さ・抜け感。強調しすぎると耳が痛くなる
6〜10kHz 空気感・サ行の鋭さ。過剰だと「サ行問題」に

人の声をEQで整える際は、「足りないところを足す」より「邪魔な部分を引く」のがコツです。

基本的なEQ操作

EQ操作には3つの基本パラメータがあります:

  • 周波数(Frequency): どの帯域を操作するか
  • ゲイン(Gain): その帯域をどれだけ上下させるか
  • Q幅(Q/Bandwidth): 影響を与える周波数範囲の広さ(狭いほどピンポイント)

たとえば、400Hzあたりにモコモコ感があるなら:

  • 周波数=400Hz
  • ゲイン=−3dB程度
  • Q幅=やや広め(1.5〜2.5)

という感じで調整していきます。

人の声をクリアにするためのEQ設定

声が「聞きやすく、伝わりやすい」状態になるには、EQによる低音・中音・高音のバランス調整が不可欠です。 ここでは、ナレーションやインタビュー、Vlogなどによく使われる人声のチューニング方法を、帯域別に見ていきましょう。

低音域の調整(〜150Hz)

低音域は、声の厚みや温かみを作る帯域ですが、部屋鳴りや風の音、ポップノイズなどの原因にもなりやすい帯域です。

  • 80Hz以下: 基本的にはハイパスフィルターでカット(ノイズ対策)
  • 100〜150Hz: 男性ボイスの低音感。過剰なら−2〜3dB

収録環境によっては、ローカットだけでグッと音像が締まることも。 風防のないマイクや屋外収録では特に重要です。

中音域の調整(200〜2kHz)

ここが人の耳がもっとも敏感な領域。EQの“主戦場”です。

  • 200〜400Hz: モコモコ、こもった印象があれば−2〜4dBカット
  • 500〜800Hz: 声の“芯”。明瞭感が足りなければ少しブースト
  • 1〜2kHz: 輪郭や歯切れ感。持ち上げすぎ注意

中域は「いじりすぎると嘘っぽい声になる」ので、小さなブースト or ピンポイントのカットが基本です。

高音域の調整(2kHz〜)

声の明瞭さ・透明感・空気感はこのゾーンに宿りますが、同時に耳に刺さる帯域でもあります。

  • 2〜4kHz: 抜け感、明瞭さ。出すなら+2dBまで
  • 5〜8kHz: サ行の鋭さ。刺さる場合は−1〜3dB程度
  • 10kHz〜: 空気感、艶感(ハイシェルフで+1〜2dB)

女性ボイスでは5〜6kHzのコントロールが肝。 過剰だと「シー」「ヒー」と耳につきやすいので注意が必要です。

実際の調整では、まずは不要な帯域をカットし、足りない部分だけを補うのが基本。 また、EQは単独で聴くのではなく、BGMや環境音とのバランスを見ながら調整するとより自然になります。

特定のvoiceの問題を解決するEQ設定

人の声には「クセ」や「特徴」があります。 ここではトビガスマルの制作現場でもよく遭遇する、特定の問題をEQでどう対処するかをケース別に解説します。

サ行の強調を抑える

「シ」「ス」「セ」などのサ行が耳に刺さること、ありませんか? とくにコンデンサーマイクや高音質マイクで起こりやすい現象です。

原因周波数: 5kHz〜9kHz

  • 6〜7kHzあたりを中心にQ幅をやや狭くして−2〜4dB程度カット
  • 必要ならディエッサー(De-esser)も併用

過剰にカットすると声がぼやけてしまうので、「気にならない程度まで下げる」のがコツです。

鼻にかかったvoiceを改善する

声に“鼻づまり感”がある場合、中域(700Hz〜1kHz)あたりが過剰になっていることが多いです。

  • 800Hz付近を−2〜3dBカット(Q幅狭め)
  • 必要に応じて2kHzあたりを軽くブーストして明瞭さを補う

EQだけで改善が難しい場合は、マイクの位置や角度を調整して“鼻の共鳴”を拾いにくくする方法も有効です。

こもったvoiceをクリアにする

「声が全体的にくぐもっている」「後ろに引っ込んで聞こえる」——これはEQで最もよくある改善ポイントです。

改善手順:

  1. まず200〜400Hzを−2〜5dBカットしてこもりを除去
  2. 次に2〜3kHzを+2〜3dBでブーストして明瞭さを追加
  3. 80Hz以下も不要であればハイパスでカット

こもり対策では、EQでの削りとブーストのバランスが大切です。 “削る”だけで終わらず、“出すべきところを出す”ことで声が前に出てきます。

声の問題は「その人の個性」でもあるため、やりすぎは禁物。 あくまで自然な変化を目指して、丁寧に整えていきましょう。

EQ設定の応用テクニック

基本のイコライザー設定ができるようになったら、次は応用。 EQは単体で完結するツールではなく、他のエフェクトと組み合わせることで、より自然で聴きやすい音に仕上がります。

コンプレッサーとの組み合わせ

EQ+コンプレッサーは、音声処理の王道コンビ。

  • EQで音のバランスを整える(「何を出すか・何を引くか」)
  • コンプレッサーで音の強弱を整える(「どこまで出すかを制御」)

おすすめの順番は、まずEQで音質を整えたあと、コンプレッサーで音量の波を抑える流れ。 EQ→Comp(補正 → 安定化)が基本です。

ただし、アタックを強調したい場合は逆(Comp→EQ)にすることもあります。

リバーブとの組み合わせ

EQで整えた声にほんのり空間感を加えるのがリバーブの役割です。 とくにYouTubeやVlogなど、声が「ドライすぎて浮いている」ように感じる時に有効です。

リバーブ前にEQをかけて、低音やサ行をカットしてからリバーブをかけることで、 「モワッ」とした濁りや「シャーッ」とした耳障りを抑えることができます。

応用例:

  • 原音にEQ(補正)→必要ならコンプレッサー→
  • リバーブのSendに別EQをかけて調整

このように、「EQは他の処理を活かす下準備」としての役割も大きいのです。

EQを中心に、ダイナミクス(Comp)や空間系(Reverb)との関係を理解することで、 より完成度の高いボイス処理が可能になります。

EQ設定のまとめ

声の印象は、映像やコンテンツの“聞きやすさ”を大きく左右します。 EQ(イコライザー)は、その声を「伝わる声」に整えるためのもっとも基本的かつ強力なツールです。

今回のまとめ

  • EQは音の周波数帯域を整える道具。人の声に特有のクセや問題も、帯域ごとにアプローチできる
  • 低音のノイズ、こもり、中高域の明瞭さ、サ行の刺さりなど、すべて帯域で調整が可能
  • “削る”を優先して、“足す”のは控えめにがEQの基本
  • 声質の問題(鼻声・サ行・こもり)は狙い撃ちで補正できる
  • EQは単独で使うより、CompやReverbと連携させて効果を最大化できる

声を整えるという行為は、単に音を良くするだけではなく、「その人の言葉を、ちゃんと届ける」ことでもあります。

私たちトビガスマルでも、ナレーションやインタビュー編集ではEQ処理が欠かせません。 それは、映像のクオリティを支える“目に見えないプロの仕事”のひとつだからです。

代表社員 廣瀬高之

EQの基本を押さえていれば、
「声が聞きづらい」は、もう怖くありません。

あなたのコンテンツが、より多くの人に心地よく届くよう、
これからもトビガスマルは“伝える技術”を磨き続けていきます。

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