明日の現場に、持っていくか。
こんにちは。合同会社トビガスマル代表の廣瀬です。
映像撮影で怖い失敗は、画だけではありません。
むしろ、あとから救いにくいのが「音」です。
インタビュー相手の声が思ったより小さい。
登壇者が急に大きな声を出した。
拍手だけ一気に音量が上がった。
本番になるとリハーサルより声量が変わった。
カメラはきれいに撮れているのに、音声が使えない。
これはかなり痛い。
そんな「録音レベル、大丈夫かな?」という不安を大きく減らしてくれるのが、32bit float録音に対応した小型フィールドレコーダー「ZOOM F3」です。
今回は、音質比較というより、
F3を仕事へ入れると、音声収録の何が楽になるのか。
という視点で考えてみます。
結論|ZOOM F3は「音声事故への不安」を一つ減らす道具
先に結論です。
F3の魅力は、
ものすごく高音質だから。
だけではないと思っています。
むしろ仕事で大きいのは、
です。
式典。
インタビュー。
講演会。
セミナー。
ロケ。
こうした現場では、被写体が本番中ずっと同じ声量で話してくれるとは限りません。
通常の録音では、
「もう少しゲインを上げるべきか」
「でも急に大きな声になったらクリップしないか」
を考えます。
F3は32bit float録音とデュアルADコンバーターを使い、F3本体では従来のような入力ゲイン調整を基本的に必要としない設計になっています。
これは、少人数で映像と音声の両方を管理する現場ではかなり大きな意味があります。
ただし、
32bit floatだから、何をしても絶対に失敗しない。
という意味ではありません。
ここは後ほど詳しく説明します。
ZOOM F3とは?
ZOOM F3は、2系統のXLR入力を備えた小型フィールドレコーダーです。
大きな特徴は、
- 32bit float WAV録音
- 2系統のXLR入力
- デュアルADコンバーター
- 最大192kHzでの録音
- +24V / +48Vファンタム電源
- 小型・軽量な筐体
- 単3電池2本で駆動
- USB給電対応
などです。
とてもシンプルに言えば、
「2本のマイクを、できるだけ失敗しにくく録るための小さなレコーダー」
です。
多チャンネルミキサーのような派手さはありません。
でも、この割り切りがF3の良さだと思います。
なぜ32bit floatが仕事で便利なのか
通常の音声収録では、録音する前に適切な入力レベルを決めます。
小さすぎれば音量が足りない。
大きすぎればピークを超えて音が破綻する。
そこで、
「どのくらいのレベルで録るか」
を調整します。
ところが現場では、リハーサルと本番で音量が変わることがあります。
本番になると人は声が大きくなる
例えばインタビュー。
テストでは落ち着いて話していた人が、本番になると熱が入って声量が上がる。
講演会。
リハーサルでは普通だった講師が、本番ではマイクへ近づいて大きな声で話す。
式典。
静かな代表挨拶の後に、大きな拍手が起こる。
音量差は普通に発生します。
そこで常に、
「クリップしないかな」
と気にしながら撮影することになります。
F3は、この部分の精神的な負担をかなり減らせる設計になっています。
F3で一番変わるのは「ゲインを見る時間」
映像制作では、一人が一つの仕事だけを担当できるとは限りません。
特に小〜中規模の現場なら、
カメラを見る。
構図を見る。
フォーカスを見る。
照明を見る。
進行を見る。
音声も確認する。
ということがあります。
その状態でさらに、
録音レベルを常時監視する。
という仕事が加わります。
もちろん音声確認は必要です。
しかし、F3のような32bit floatレコーダーを使えば、
「少し大きくなったからすぐゲインを下げないと」
という操作を減らせます。
これは単なる便利機能ではありません。
別のことへ注意を向けられる。
という意味で、仕事そのものを変えてくれます。
式典撮影でF3が向いている理由
周年式典や記念式典には、音量の違う場面が次々と登場します。
代表挨拶。
来賓祝辞。
表彰。
記念講演。
司会。
拍手。
懇親会。
一日の中でも音声条件が変わります。
人によって声量が全然違う
同じ演台マイクでも、
マイクへ近づいて話す人。
離れて話す人。
大声の人。
小声の人。
がいます。
映像ならカメラ側である程度一定の条件を作れても、人の声量まではこちらで完全にコントロールできません。
だから、ダイナミックレンジの広い録音は式典との相性がいい。
拍手など急な大音量が入る
静かな挨拶から突然拍手。
表彰後に歓声。
動画上映後に大きな拍手。
こうした急激な音量変化があります。
通常の録音なら、ピークをどこまで想定するかが気になります。
F3は、こうした音量差の大きい現場で使いやすいレコーダーです。
インタビュー撮影とも相性がいい
F3と特に相性がいいと思うのがインタビューです。
インタビューでは、
質問者。
インタビュー対象者。
の2人を別々のマイクで録ることがあります。
F3はXLR入力が2系統。
つまり、
1ch=インタビュー対象者
2ch=質問者
という非常に分かりやすい構成ができます。
あるいは、
1ch=メインマイク
2ch=バックアップマイク
という考え方もできます。
多機能ではありません。
でも、
2人の声を確実に残したい。
という用途には、この2chというシンプルさがむしろ使いやすい。
周年動画のインタビューでも音はかなり重要
周年動画では、
創業者。
会長。
社長。
社員。
OB・OG。
取引先。
などへインタビューを行うことがあります。
そこで重要なのは、映像だけではありません。
むしろヒストリー動画では、
本人の声そのものが会社の記録になります。
映像が多少暗くても編集で救えることがあります。
構図もトリミングできる場合があります。
でも、
声が割れている。
ノイズで聞き取れない。
音声が録れていない。
となると、後から取り返すのは非常に難しい。
だからインタビューでは、
カメラ以上に音声へ保険をかける。
くらいでもいいと思っています。
カメラに直接録音するのと何が違う?
「カメラにもマイク入力があるのだから、直接録ればいいのでは?」
という考え方もあります。
もちろん、それで十分な現場もあります。
ただ、専用レコーダーを分けるメリットがあります。
| 方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| カメラへ直接録音 | 機材が少ない・同期不要 | カメラとマイクの位置関係に制約される |
| F3で別録り | マイクの近くへ配置しやすい・32bit floatで録音できる | 編集時に映像と同期する必要がある |
特にインタビューでは、
カメラは少し離れた場所。
マイクは被写体の近く。
にしたいことがあります。
その場合、小さなレコーダーを被写体側へ置けるのは便利です。
F3の良さは「小さいこと」
高機能なフィールドレコーダーはいろいろあります。
ただ、仕事道具は性能だけでは決まりません。
持っていくのが面倒ではない。
これはかなり重要です。
F3は2chに割り切っているぶんコンパクトです。
カメラバッグへ入れておく。
インタビューセットへ常備する。
小さなケースへマイクと一緒にまとめる。
という運用がしやすい。
巨大な音声システムを毎回持ち出すほどではない。
でもカメラ内蔵録音だけでは少し不安。
その間を埋めてくれる機材です。
2chしかない。でも、そこがいい
F3の入力は2系統です。
大規模収録だけを考えると、少なく感じます。
しかし、
インタビュー。
小規模講演。
ワイヤレスマイクのバックアップ。
会場ミキサーからの音声収録。
などでは、2chで十分な場面があります。
多機能な機材は便利です。
一方で、機能が増えれば、
設定。
配線。
確認項目。
も増えていきます。
F3は、
2本入れて、確実に録る。
という目的がはっきりしています。
「何でもできる」ではなく、
「これをやる」
が明確な道具は、現場では使いやすいと思います。
会場ミキサーから音をもらう使い方にも注意
式典やセミナーでは、会場の音響ミキサーから音声をもらってレコーダーへ入れることがあります。
この場合に大切なのが、
F3が32bit floatだから、どんな大きさの信号を入れても大丈夫ではない
ということです。
F3にも入力できる信号レベルの上限があります。
公式仕様では最大入力レベルは、
MIC設定で+4dBu。
LINE設定で+24dBu。
です。
つまり、ミキサーからラインレベルを受けるなら、F3側の入力設定やミキサー側の出力を正しく合わせる必要があります。
32bit floatでも「絶対に音割れしない」わけではない
ここは重要です。
32bit floatについて、
「絶対に音割れしない」
と説明されることがあります。
実際、従来の録音に比べ、録音レベル設定で失敗するリスクを大きく減らせます。
ただし、
何をしても絶対に音が壊れない魔法ではありません。
入力できる信号そのものには上限がある
先ほどの通り、F3の入力回路にも許容できるレベルがあります。
そこを超える信号を入力すれば問題になります。
マイク側で歪んだ音は救えない
例えば、大音量をマイクそのものが正常に受けられず歪んでしまった。
その状態でF3へ入ってきた場合、
すでに歪んでいる音を32bit floatが元に戻してくれるわけではありません。
マイク選びやマイク位置は今まで通り重要です。
ノイズが消えるわけでもない
エアコン。
風。
服との擦れ。
ケーブルノイズ。
会場の反響。
こうしたものも録音されます。
32bit floatは、
録音レベル設定の問題を大きく減らす技術
と考えた方が分かりやすいと思います。
だから「モニターしなくていい」わけでもない
F3を使えばゲイン調整の心配は減らせます。
でも、
ヘッドホン確認そのものが不要になるわけではありません。
マイクが抜けている。
XLRが正しく刺さっていない。
服がマイクへ当たっている。
会場ノイズが大きい。
ワイヤレスマイクにノイズが出ている。
そもそも狙った音源が入っていない。
これは32bit floatでは救えません。
波形が出ているからOKではなく、
実際に耳で聞く。
ここは変わりません。
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F3を入れてもマイク選びは重要
レコーダーが良くても、元になるマイクが用途に合っていなければ良い音にはなりません。
インタビューなら、
ピンマイク。
ショットガンマイク。
ハンドマイク。
などから、撮影条件に合わせて選びます。
例えばピンマイクなら、
被写体へ近づけられる。
周囲の音より声を拾いやすい。
画面へ大きなマイクを出さずに済む。
といったメリットがあります。
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ライブ配信ではF3だけで完結するとは限らない
F3はUSBオーディオインターフェースとして使うこともできます。
ただし、大規模なハイブリッド配信では、
会場マイク。
オンライン登壇者。
BGM。
動画音声。
会場スピーカー。
オンラインへの送り。
など、複数の音声経路を処理する必要があります。
そうなるとF3だけではなく、音響ミキサーなどを使ってシステムを組みます。
つまり、
F3は万能な音響ミキサーの代わりではありません。
録音と2ch入力に強い小型レコーダーです。
会場音声とオンライン音声を組み合わせるハイブリッド配信の考え方はこちらの記事で詳しく紹介しています。
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F3の電源はどうする?
F3は単3電池2本で動作します。
メーカーはアルカリ乾電池で8時間以上の連続駆動を案内しています。
また、USB給電にも対応しています。
現場では、
短時間なら電池。
長時間ならUSB給電。
予備として新品電池。
など、運用に合わせて考えられます。
ただし仕事で使うなら、
公称時間ギリギリまで電池を使う運用は避けたい
ところです。
本番前に残量を確認する。
予備電池を用意する。
長時間収録では電源方法を決めておく。
これはF3に限らず重要です。
Bluetoothリモート操作もできる
別売のBluetoothアダプタ「BTA-1」を装着すると、専用アプリからF3をリモート操作できます。
録音・停止。
入力波形。
電池残量。
残り録音時間。
などを確認できます。
F3を、
演台の近く。
インタビュー対象者の近く。
カメラから少し離れた場所。
へ置く場合には便利です。
ただし、
リモート操作できるから確認へ行かなくていい
というより、確認手段が一つ増える、と考える方が安全だと思います。
ZOOM F3の弱点
かなり魅力的なレコーダーですが、当然万能ではありません。
2chまで
メリットでもあり、弱点でもあります。
マイク4本。
6本。
8本。
を個別に録音する現場には向きません。
その場合は、多チャンネル対応の別機材が必要です。
本体マイクはない
F3単体を机へ置けば録れる、というタイプのハンディレコーダーではありません。
基本的にはXLR接続のマイクや、外部機器から音声を入れて使います。
つまり、
F3だけ買って終わりではない。
ということです。
映像との同期が必要になる
別録りする場合は、編集で映像と音声を同期する必要があります。
カメラへ直接録音する方法より、一工程増えます。
その代わり、
マイク位置。
録音品質。
レコーダー配置。
の自由度が上がります。
32bit floatでも音声の知識は必要
ここは何度でも言いたいところです。
F3を買えば、
マイク位置。
ファンタム電源。
MIC / LINE。
XLR。
モニター。
バックアップ。
を考えなくてよくなるわけではありません。
ゲインという一つの心配を減らしてくれる。
これくらいに考えると、F3の良さを正しく評価できると思います。
F3を使いたい現場・別の機材を選ぶ現場
| 用途 | F3 | 理由 |
|---|---|---|
| 1人インタビュー | ◎ | 小型で音声を独立収録しやすい |
| 2人インタビュー | ◎ | 2入力を分けて録音できる |
| 周年動画インタビュー | ◎ | 撮り直しにくい声を残す用途と相性がいい |
| 講演会のバックアップ録音 | ◎ | 会場音響から音を受ける用途に使いやすい |
| 式典の記録音声 | ◎ | 声量差のある進行に対応しやすい |
| 4人以上の個別マイク収録 | × | 入力が2chまで |
| 大規模ライブ配信の音響ミキサー | × | 専用ミキサーの方が適している |
| 本体だけで環境音を録る | × | 本体マイクを搭載していない |
トビガスマルの現場評価
「スペックがすごいか」ではなく、
明日の仕事に持っていくか。
という視点で評価します。
| 評価項目 | 評価 | 現場目線で見ると |
|---|---|---|
| 現場投入度 | ★★★★★ | インタビューや少人数の音声収録と相性がいい |
| 設営速度 | ★★★★☆ | 2chに割り切られているため構成をシンプルにしやすい |
| 操作性 | ★★★★★ | 従来型のゲイン調整から解放されるメリットが大きい |
| 録音安心度 | ★★★★★ | 声量差の大きな収録で心理的な負担を減らしやすい |
| 持ち運び | ★★★★★ | 小型なので撮影セットへ追加しやすい |
| 価格納得度 | ★★★★★ | 音声事故を避けたい仕事用途を考えると魅力が大きい |
| 仕事改善度 | ★★★★★ | 録音レベルへ割いていた注意を減らし、映像・進行・被写体の確認へ集中しやすくなる |
F3に向いている人
例えば、
- 企業インタビューを撮る
- 周年動画を制作する
- 講演会を記録する
- 式典を撮影する
- 少人数で撮影することが多い
- カメラと音声を一人で見ることがある
- 録音レベルの失敗が怖い
- 大きなフィールドレコーダーまでは必要ない
- 小さな機材で確実に2chを残したい
という人には、かなり面白い製品です。
一方、
- 多数のマイクを個別収録したい
- 本体マイクだけですぐ録音したい
- 本格的な音響ミックスを一台で行いたい
という用途では、別の機材を検討した方がいいでしょう。
F3が教えてくれるのは「音声に保険をかける」という考え方
映像制作では、カメラへお金をかけたくなります。
新しいカメラ。
明るいレンズ。
高解像度。
きれいなボケ。
もちろん大切です。
でも、仕事では、
きれいに撮ることと同じくらい、失敗しないことが重要です。
インタビューの声。
社長の挨拶。
創業者の言葉。
一度しかない記念講演。
後から撮り直せない音があります。
そこへ保険をかける。
そう考えると、F3の価値は「音質」だけではなくなります。
失敗する可能性を一つ減らす道具。
この見方の方が、仕事道具としてF3を理解しやすいと思います。
トビガスマルの結論|明日の現場に、持っていく
ZOOM F3。
トビガスマルの道具箱としての結論は、
です。
理由は、
32bit floatだから格好いい。
192kHzだからすごい。
ではありません。
「録音レベル、大丈夫かな?」という心配を一つ減らしてくれるから。
です。
PINETA Proは、高さ調整と移動の手間を減らす。
CineView Master 4Kは、配線と養生の手間を減らす。
F3は、
音声レベルを外す不安を減らす。
トビガスマルの道具箱で紹介したいのは、こういう機材です。
高性能だからではなく、
現場の面倒、不安、失敗を一つ減らしてくれる。
だから明日の現場へ持っていく。
F3は、そんな道具だと思います。
「トビガスマルの道具箱」とは
明日の現場に、持っていくか。
カメラ、レンズ、三脚、音響、配信機材、ストレージ。
映像制作会社トビガスマルが、仕事の現場で使う道具を現場目線で紹介します。
スペック表だけでは分からない。
仕事で便利なところも、困るところもある。
「これ、仕事で本当に使える?」
その答えを、現場から。
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