
こんにちわ、合同会社トビガスマル代表の廣瀬です。
映像制作の現場で、「あれ、テロップ切れてない?」「スマホで見ると文字がギリギリ…」
そんなヒヤリとした経験、ありませんか?
実はそれ、セーフティゾーンの考慮不足が原因かもしれません。
映像におけるセーフティゾーンとは、「安全に視聴される保証範囲」。
テレビ、YouTube、SNSなど、それぞれのメディアで表示領域が微妙に異なります。
それを知らずに編集してしまうと、せっかくの映像も見切れ・トラブル・印象ダウンにつながりかねません。
この記事では、映像制作のプロが実際に使っているセーフティゾーンの知識と設定法を、
テレビからSNSまで対応できる形でわかりやすく解説します。
Premiere Proなどの主要ソフトでの設定方法や、最新プラットフォームへの実践的な対応策も含めて、
「観てもらうための映像づくり」の基本をしっかり押さえていきましょう。
目次
セーフティゾーンとは?映像制作における基本
セーフティゾーンとは、映像内の「確実に見せたい要素を配置すべき安全な範囲」のことです。 主に、テロップ・ロゴ・人物の目線・重要なアクションなどがこの範囲内に収まっている必要があります。
テレビ、Web、モバイルなど、視聴環境によって映像の表示エリアは微妙に異なります。 特に上下左右が切れてしまう「見切れ」は、プロとして避けたいトラブルのひとつです。
セーフティゾーンの定義と役割
セーフティゾーンには2種類あります:
- アクションセーフ(Action Safe): 画面内で動きや演出が見えるべき範囲
- タイトルセーフ(Title Safe): テキストやロゴなど、読ませたい情報が収まるべき範囲
つまり、「アクションは外寄りでもいいけど、文字はもっと内側に」という考え方です。
これを守ることで:
- テレビでも文字が切れずに読める
- スマホでもロゴが中央に見える
- マルチデバイスでの視認性が安定する
セーフティゾーンは、「見える」「伝わる」を保証する設計図とも言えます。
アクションセーフとタイトルセーフの違い
アクションセーフ:画面全体の約90%程度(上下左右5%ずつを除いた範囲)
タイトルセーフ:画面全体の約80%程度(上下左右10%ずつを除いた範囲)
例えば1920×1080pxのフルHD映像の場合:
- アクションセーフ領域:約1728×972px
- タイトルセーフ領域:約1536×864px
ロゴ・テロップ・字幕・重要テキストは、必ず「タイトルセーフ」内に配置するのが原則です。
セーフティゾーンを考慮しないとどうなる?
セーフティゾーンを無視した編集で、実際に起こるトラブルは以下のとおりです:
- テレビで文字の端が切れてしまう
- スマホでボタンや字幕が画面外に追いやられる
- 重要なロゴやメッセージが読みづらくなる
特に企業案件や広告動画では、「情報が伝わらない=効果が出ない」という結果にもつながるため要注意です。
「テロップが少しズレてただけで、クライアント修正が発生した」 そんな経験がある方は、セーフティゾーンを再確認しておくべきかもしれません。
セーフティゾーンの推奨値:プラットフォーム別ガイド
映像の用途が「テレビ放送」なのか「YouTube」なのか、それとも「縦型SNS動画」なのかによって、セーフティゾーンの設計基準は変わります。
ここでは、それぞれの代表的なプラットフォームにおける推奨セーフティゾーンと注意点を整理します。
テレビ放送用映像のセーフティゾーン
テレビの世界では、放送用規格(NTSC/HD/4K)に合わせたセーフティゾーンが厳密に定められています。
- アクションセーフ:画面の上下左右5%内側
- タイトルセーフ:画面の上下左右10%内側
特に古いTVやアナログ信号対応の番組では、オーバースキャン領域で映像の端が見切れるケースも多く、 地上波やBS番組向けの映像ではタイトルセーフを絶対遵守とするのが基本です。
YouTube用映像のセーフティゾーン
YouTubeではプレイヤーが全画面・ブラウザ・スマホ・テレビで異なる表示になるため、「どこで観られても違和感がない」ことが重要です。
推奨は以下の通り:
- アクションセーフ:上下左右5%内側
- タイトルセーフ:上下左右7.5〜10%内側
モバイルでの視認性を考慮し、画面の中心にテキストやロゴを寄せる構成がベスト。
また、エンドカードや概要欄リンクを意識したレイアウト設計も大切です。
SNS動画(Instagram、TikTokなど)のセーフティゾーン
縦型全画面表示が基本のSNS動画では、UI(アプリのボタン類)と重ならない配置が最重要ポイントです。
たとえばInstagramリールやTikTokでは:
- 画面上部:約250px(プロフィール名や説明と重なる)
- 画面下部:約250px(いいね・コメント・シェアボタンと重なる)
そのため、縦1080×1920pxの映像なら:
- 安全な情報表示領域は中央 1420px程度
縦型動画ではUIとの重なりを避けたゾーニングが最重要です。各SNSのガイドラインも定期的にチェックしましょう。
動画の再利用やクロスプラットフォーム展開を考えるなら、 「一番狭いセーフティゾーンに合わせて作る」のが、後々ラクです。
主要編集ソフトでのセーフティゾーン設定方法
セーフティゾーンを意識するには、編集ソフトで“見える化”するのが一番です。 ここでは、映像制作で多く使われている主要ソフト3つでの設定方法をご紹介します。
Premiere Proでの設定
Premiere Proでは、タイムライン上でセーフマージン(セーフティゾーン)を表示できます。
設定手順:
- プログラムモニター右下のスパナアイコン(設定)をクリック
- 「セーフマージンを表示」にチェックを入れる
- 必要に応じて、「タイトルセーフ」「アクションセーフ」どちらを基準にするか確認
マージンサイズを変更したい場合は、 環境設定 > グラフィックとタイトル > セーフマージン
からカスタマイズが可能です。
After Effectsでの設定
After Effectsでは、コンポジションパネル上にガイドを表示できます。
設定手順:
- メニュー「表示」→「タイトル/アクションセーフ」をオン
- これで、2種類のガイド(内側がタイトルセーフ、外側がアクションセーフ)が表示されます
ガイドを基準にアニメーションの配置・動きの始点終点などを調整すると、見切れのない安全なモーショングラフィックスに仕上がります。
オンラインツールでの簡易設定
編集ソフトが手元にない場合や、サムネイル・バナー制作時にセーフティゾーンを意識したい場合は、ガイド入りテンプレートやWebツールが便利です。
例:
- Canva: 動画サイズテンプレートにグリッドを追加可能
- Frame.ioやWipster.io: レビュー用にガイドレイヤーを追加できる
- After Effectsテンプレート販売サイト(Motion Arrayなど): セーフゾーン付きテンプレートあり
簡易的なサムネやSNS投稿にも、「文字をどこまで入れていいか」を可視化するだけで大きな差が出ます。
制作の現場では、セーフティゾーンの“ガイドライン表示”をONにしておくことが基本動作です。 表示さえしていれば、配置ミスや修正リスクはグッと減ります。
セーフティゾーンに関する注意点と対策
セーフティゾーンを理解し、設定しても、実際の表示環境によっては思わぬ落とし穴があります。
ここでは、制作現場でありがちな注意点と、対策方法を3つの観点から紹介します。
デバイスごとの表示の違いを考慮する
視聴者は映像を様々な環境で見るため、同じ動画でも“見え方”は異なります。
たとえば:
- スマートフォンでは上下が見切れやすい
- テレビではオーバースキャンで端が表示されない
- プロジェクター上映では四隅が歪む場合がある
このため、必ず複数デバイスでの試写・モニターチェックを行い、実際の環境で見切れや読みにくさがないか確認しましょう。
古いデバイスへの対応
企業案件や公共施設での放映、DVD納品など、まだまだ古い機材での再生が前提の現場もあります。
特に地デジ以前の放送用画面や安価なデジタルサイネージ機器などでは、
- 上下左右10%以上の情報が“切れる”ことも
- SD解像度へ強制ダウンスケーリングされる場合も
こうしたケースでは、あえて“広めのセーフゾーン”を確保して制作するなどの対策が必要です。
定期的な見直しとアップデート
プラットフォームやSNSの表示仕様は、年々変化しています。
- InstagramのUIエリアがアップデートされた
- YouTubeのショート動画仕様が変更された
- 各OSやデバイスのUIレイアウトが変化した
「前に作った動画のレイアウトが、今は使いづらい…」というのはよくある話。
セーフティゾーンの基準は一度決めたら終わりではなく、“定期的な見直し”が必要です。
また、チーム内での認識ズレを防ぐためにも、セーフティゾーンに関するガイドラインを社内で共有しておくと安心です。
まとめ:セーフティゾーンを理解し、最適な映像制作を
映像は「観てもらって、伝わって、心が動く」ことで初めて価値が生まれます。
そのために、情報をきちんと届けるための“視覚設計”=セーフティゾーンの理解と運用は、すべての映像制作者にとっての必須知識です。
今回のポイントを振り返ると:
- セーフティゾーンには「アクションセーフ」と「タイトルセーフ」がある
- テレビ、YouTube、SNSではそれぞれ基準が違うため、用途に応じた設定が必要
- Premiere ProやAfter Effectsでは簡単にセーフティ表示が可能
- 古いデバイス・アプリUI・表示環境の違いも事前に想定することが重要

私たちトビガスマルでも、「あと2文字ずれてたら読めなかったね」といったような場面はよくあります。
現場では、小さなズレが信頼やブランドの印象を左右することもあります。
だからこそ、セーフティゾーンは「気づいたときだけ使う」ものではなく、常に意識しておくべき設計指標です。
すべての制作物が、観る人にきちんと届くように。

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